メガバンクとは思えない問題の続出に業を煮やした監督官庁が、ついに前代未聞の対応に打って出た。就任してわずか2か月あまりの“異色の経歴”を持つ金融庁長官が、巨大銀行の根深い病巣にメスを入れる──。みずほ銀行の相次ぐシステム障害を受け、金融庁は9月22日、同行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に業務改善命令を出した。
金融機関でシステム障害などが起きた場合、金融庁が検査で原因の解明を進め、その結果に基づいて行政処分を下すのが通例だ。しかし、今回は全容解明が終わっていない段階で、検査を継続しながら業務改善命令を下すという異例ずくめの展開となった。
前例のない対応に踏み切った金融庁を率いるのが、7月8日に長官に就任したばかりの中島淳一氏である。
理系採用は“変わり者”
1985年に大蔵省(当時)に入省した中島氏は、「東大法学部」出身が当たり前のなかで、東大工学部計数工学科を卒業した経歴の持ち主。在学中はコンピューターで図形処理するプログラミングやAI(人工知能)の研究をしてきた。
「学歴だけではありません。金融庁長官は歴代、金融機関を所管する監督局長の経験者という慣例がありましたが、それに反して、庁内の調整を担う総合政策局長を経ての長官就任となった。史上初の理系出身の長官であり、みずほ銀行の複雑怪奇なシステム問題の指揮を執るうえで、その手腕を発揮することが期待されている」(全国紙経済部記者)
1985年入省の同期には、矢野康治・財務事務次官や可部哲生・前国税庁長官(今年7月に退官)がおり、“豊作の85年入省組”と言われてきた。
「出世した同期は何かと派手で目立つタイプが多かったのに対し、若手時代から優秀だったけど、目立たないところでコツコツ実績を積み上げるタイプだった。周囲とは対照的な存在だったので、“ジミー中島”の呼び名が定着した。神奈川の湘南高校出身で趣味はヨットと洒落ているが、同じ高校の先輩にあたる(セクハラ醜聞で辞任した)福田淳一・元財務次官は遊び人で勉強もできる湘南ボーイだったが、それとは正反対のキャラクターの官僚です」(財務省関係者)