同じく東大理系(理学部数学科)の出身者として1980年に大蔵省に入省した高橋洋一氏(嘉悦大学教授)は、「5期離れているので、直接の面識はない」と前置きしたうえで、こんな見方をする。
「当時、理系の学生が採用されたのは数年に1人くらいのペースで、省内ではマイナーな存在でした。私を含め、話題作りで変わった奴を採用していただけでしょう(笑)。ただ、金融の世界は、実は理系でなければわからないことだらけ。デリバティブ(金融派生商品)や先物といった込み入った取引はもちろん、それこそシステムはコンピューターのプログラムの集合体だから、数学がわからないと理解するのは不可能ですよ」
高橋氏の同期入省には、中島氏の3代前の金融庁長官にあたる森信親氏がいる。金融改革や地銀再編に辣腕を振るい、銀行関係者から恐れられたことで知られるが、「森氏も、最後は東大教養学部の国際関係論を卒業したから文系に区分されているが、入学したのは東大の理IIなので、実は理系なんです。複雑化する金融の問題に対応するためには理系の力は必須ということでしょう」と高橋氏は解説する。
最終学歴として初の理系出身長官となる中島氏は、みずほ銀行のシステム問題でどう手腕を発揮するかが問われる。
※週刊ポスト2021年10月15・22日号