児童虐待のニュースが度々取り沙汰されている昨今。近所で頻繁に子供の泣き声や怒鳴り声が聞こえたら、「もしかして虐待かも?」「通報すべきでは?」と思うこともあるだろう。だが、子供のしつけは家庭によって異なるもの。万が一勘違いだった場合、その後の近所付き合いに支障をきたしそうだ。こんな時どうすれば良いか、実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
マンション住まいなのですが、今年の春頃からリモートワークをしています。換気のために窓を開けていると、隣の家から母親の怒鳴り声や子供の泣き声が聞こえることがしばしばあります。その様子から虐待のように感じるのですが、警察に通報すべきでしょうか。もし違っていた場合、私が通報したとわかったら、隣に住みづらくなるのではないかと心配です。(神奈川県・39才・会社員)
【回答】
児童を虐待から守る2つの法律が、国民に通告義務を課しています。まず、子供の福祉を図る「児童福祉法」では、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を「要保護児童」と定義し、要保護児童を発見した者に児童相談所などへの通告義務を課しています。
次に、虐待から児童を守る「児童虐待防止法」は、児童の体に外傷が生じる暴行を加えることやわいせつ行為をしたり、児童に食事を与えなかったり、児童に対して著しい暴言を吐くことなどを虐待と定義し、児童虐待を受けた児童を発見した者に福祉事務所や児童相談所への通告を義務付けています。さらにこの法律では、現実に虐待を受けた児童だけでなく、「児童虐待を受けたと思われる児童」の場合でもこの通告の対象になるとしています。
怒鳴り声や泣き声がしばしば聞こえるところから、あなたが児童虐待ではないかと思うのは不合理なことではありません。仮に、実際は虐待とはいえないしつけであったり、子供の泣き癖であったりした場合、通告された隣人に不快に思われ、名誉毀損などの非難を受けないか気になるかもしれません。