政策転換で不動産セクターの優良企業に追い風も
金融危機を過度に心配する必要はないだろうが、景気の悪化についてはやはり心配になる。18日に発表された7-9月期の実質経済成長率は4.9%で前四半期と比べ3ポイント低下、市場予想と比べて0.3ポイント低い水準となった。景気を悪化させないためにも今後の金融政策が気になるところだ。
第3四半期の金融統計をみると、9月末のM2(市場に流通している通貨の供給量)は8.3%増で前月末を0.1ポイント上回っている。社会融資規模は前月末を0.3ポイント下回っているものの、10%増と2桁の伸びを保っている。流動性は充分供給されている。また、9月末の人民元貸出残高は前月末と比べ0.2ポイント下回っているものの、11.9%増である。こちらも安定成長だ。
間もなく米国ではテーパリング(量的金融緩和政策の段階的縮小)が開始されるとみられ、資金流出など中国の金融市場にも悪影響が及ぶかもしれない。それに対して当局、は景気サイクルを小さくする方向に金融を調整する、今年、来年の政策との整合性が取れるように調整するとしている。
中国の政策はメリハリが効いている反面、バランスが取れていることが多い。不動産企業に対しても、“先に厳しく、後から優しく”といったやり方であろう。バブルつぶしばかりが目立つが、住宅市場を健全にすること、根強い実需に応えることも重要な政策目標である。
不動産セクターに関しては、今後、優良な企業に対しては融資の拡大、消費者に対してはローンの優遇政策などが実施される可能性がある。香港上場銘柄では、財務内容のしっかりしている華潤置地(01109)、中国海外発展(00688)、万科企業(02202)などが注目を集めていくのではないだろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。