収入が多いほど幸福度は高まる──そう考える人は多いかもしれない。だが実際は、お金をたくさん持っていることと幸福度は比例しないという。
大阪大学社会経済研究所の調査では、年収500万円までは、収入が増えるほど幸福度は上がるが、そこから900万円までは横ばい。そしてなんと、年収1500万円以上は、金額が上がるにつれて幸福度は少しずつ下がっていく。
内閣府の最新の調査でも、最も満足度が高いのは年収2000万~3000万円の層で、それ以上になると満足度はゆっくりと下降する。満足度が最も低い年収100万円未満の“貧困層”ほどではないにしろ、年収1億円以上の“最富裕層”の満足度は、世帯年収を10段階に分けた中で、下から5番目だった。
現在、日本人の平均年収は433万円、中央値は370万円だ。この年収だと、お金持ちとはとても言い難いが、倹約すれば都心でも充分暮らしていける。
明治大学大学院情報コミュニケーション研究科講師で行動経済学者の友野典男さんは、その土地での最低限の衣食住を確保するお金+保険や医療など安心のためのお金+時々プチぜいたくができるお金が少しあれば、充分に幸せは手に入ると語る。
金額に関係なく、いま生活をやりくりできているなら、そのお金で幸せは“買える”ということだ。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「お金は、使わなければただの紙切れと金属の塊です。お金で幸せを手に入れるには、すぐに満足感が薄れる高級品ではなく、幸福が持続する『体験』に投資すべきです」
友野さんは「モノの消費」ではなく「コトの消費」をすすめる。
「誰かと一緒に食事をしたり、旅行に出かけたりすることで体験を共有し、人間関係も深められる。モノは人と共有できませんが、体験ならば共に味わえます。事実、米ハーバード・ビジネス・スクールの研究によれば、モノ消費よりも、体験のために出費するコト消費の方が、幸福度が高いことがわかっています」
また、誰かのためにお金を使うことも、幸福度が高まる。