カナダのブリティッシュコロンビア大学の調査によれば、ボーナスの一部を自分のために使ったグループと他人にあげたグループを比較した結果、後者の方が幸福度が20%も高くなることがわかった。同様の研究は日本国内でもされており、やはり、寄付やプレゼントにお金を使うと、幸福度が上がった。
心理学者のアブラハム・マズローによると、人間の欲求には5段階あり、生きるために必須、かつ本能的な順に、食事や睡眠などの「生理的欲求」、身の危険がない「安全の欲求」、家族や組織に属する「社会的欲求」、人から認められる「承認欲求」、そして自分の理想を叶える「自己実現欲求」の順に存在しており、上に行くほど高度になる。
さらにこの上に、「6つ目の欲求」があるという。家計コンサルタントの八ツ井慶子さんが言う。
「それは『自己超越の欲求』です。見返りを求めず、人のために行動することで満たされるといわれています」
幸せから遠いお金の使い方とは?
2019年、ZOZO創業者の実業家・前澤友作さんがSNS上のフォロワー100人を対象に100万円ずつ配り、話題になった。
「一見、お金持ちの売名行為と思われがちですが、実際に人のためにお金を使い、受け取った人からは感謝されています。お金を手に入れるとドーパミンによって一時的に幸せを感じる一方、人から感謝されるとオキシトシンが出て、“つながりの幸せ”を感じます。
また、感謝の言葉は誰から何度言われても、感じる幸せの大きさは変わらないこともわかっています。前澤さんは、自分のお金を配ることで、オキシトシン的幸福を“購入”したのです」(樺沢さん)
オキシトシン的な幸せの大きさは、金額によって左右されることはない。前澤さんのように多額のお金を用意せずとも、家族や友人にプレゼントを買ったり、コンビニのレジに置いてある募金箱に小銭を入れたり、電車で席を譲ったりするだけでも、この「最も高度な欲求」は満たされる。
同じ10万円なら、バッグを買うよりも友人と旅行に行く。500円なら、ケーキを食べるよりも募金する。これだけで、あなたの幸福度は大きく変わるのだ。