一方、最も幸せから遠いのは、「お得さ」に引かれてする買い物だ。「別にいらないけど、買えるなら買っておこう」というあいまいな動機は、幸せにはつながらない。
「必要ではないものとお金を交換するのは、自分や家族が汗水たらして稼いだお金を捨てているのと同じです。“手元にお金があるから何かに使おう”と買い物するのではなく、“自分が幸せになるために、お金を何と交換すればいいか”を考えることが大切ではないでしょうか」(八ツ井さん)
宝くじの当選者の多くが幸せになれないのも、それが“100万円がなくても生きるのに困らないけど、もらえるならもらっておこう”と、感謝や執着なく受け取ったあぶく銭だからではないだろうか。
とはいえ、決して高くはない収入で、この先死ぬまで幸せに暮らせるか、私たちの多くが不安を抱えている。だが、それもいまだけの悩みかもしれない。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所で幸福学を研究する前野マドカさんが言う。
「人は、生まれたときは当然、何の不安もなく幸福です。ところが成長するにつれ、他人と比較されて幸福度が下がっていく。どん底は、子供が反抗期を迎えたり、社会的責任が増えたりする40~50代です。
やがてさまざまな肩の荷が下りる年齢になると、『老年的超越』を迎え、幸福度が上がることがわかっています。邪念が消え、一日一日を幸せに感じる。つまり、人生とは幸せに生まれて、幸せに帰っていく旅なのです」
友野さんは、いま、特に若者の間で「言い訳消費」が増えていると話す。
「将来への不安からお金を使うことに罪悪感を抱き、“誕生日だから”“残業したから”“今日はハロウィンだから”などと、自分に言い訳しなければプチぜいたくもできない人が増えているのです。これでは、働いても消費しても、幸福度は上がりにくい」(友野さん)
ケチらず、言い訳せず、自分と大切な人のために堂々とお金を使っていれば、幸せは必ずあなたに寄り添ってくれるはずだ。
※女性セブン2021年11月4日号