たとえば、同じ電機メーカーではソニーグループの伸長が著しい。スマホに使われる画像センサーの好調に加え、映画『鬼滅の刃』などエンターテインメントでもヒットを飛ばす。そうした国内勢との競争について、前出・真壁氏はこう見る。
「日立とソニーの事業領域は重複しないので真っ向からぶつかるとは考えにくい。同業の重電メーカーとはすでに明暗が分かれ、その差はなかなか埋まらないはずです。
あえて課題を挙げるとすれば、やはり海外勢との競争でしょう。日立が目指すべき、独シーメンスやスイスのABBといった会社は、ヨーロッパでビジネスを展開してきた“生まれながらのグローバル企業”です。日立が真のグローバル企業になるには、まだ知恵を絞るべきことが多いはずだ」
相次ぐ海外企業の巨額買収の成否も気になる。
「巨額買収が吉と出るか、凶と出るか。その判断は現時点では難しい。日立がさらに大化けする可能性もあれば、再び危機を迎える可能性もある。それほどのインパクトを持っている案件といえるでしょう」(経済アナリスト・森永卓郎氏)
何より、今後のカギを握るのは「人」だと前出・関氏は言う。
「日立がここまで変革できたのは、歴代社長のリーダーシップの下、社員が奮起、過去の“悪しき社風”と決別して、士気が高まったからです。その危機感を経営陣や社員がいつまで持ち続けることができるか。そこに日立の未来はかかっている」
生まれ変わった「巨艦」の行方は、日本経済全体にも影響を及ぼすのは間違いない。
※週刊ポスト2021年11月19・26日号