秋山博康 刑事バカ一代

元徳島県警・リーゼント刑事 人質立て籠り現場で九死に一生の体験

リーゼント刑事の「九死に一生」の体験とは?(イラスト/友利琢也)

リーゼント刑事の「九死に一生」の体験とは?(イラスト/友利琢也)

 徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」。秋山氏が刑事時代に遭遇した“あわや殉職”の立て籠り事件について綴る。

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 おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。

 今も昔も刑事モノはドラマの花形。今期は人気シリーズ『相棒』が放送中やけど、ワシの若い頃は『太陽にほえろ!』や『西部警察』が全盛で、現場の刑事がドラマの刑事を真似することもあった。

 刑事ドラマと言えば派手な殉職シーンがつきものやが、ワシも現職時代は何度も死にかけたもんや。

 徳島東署の強行犯係長として、人質立て籠もりの現場に突入した時は、犯人が振り下ろした出刃包丁がワシの顔の数センチ前に迫った。「アカン! 死んだ」と思ったが、ワシが咄嗟に包丁を持つ相手の手首を掴むと同時に、別の捜査員が犯人にタックルして九死に一生を得たんや。

 その数か月後、今でいうストーカー男が女性を人質に民家に立て籠もった。女性が隙を見て脱出したので部下2人と室内に踏み込むと、もぬけのカラでカーテンがぱらりと開いていた。てっきり犯人は逃げたものと思ったが、その瞬間、洋服ダンスの観音扉がバーンと開いて、中からガソリンの一斗缶を持った男が飛び出してきた。

 興奮状態の男は「ワシャ、死ぬんじゃ!」とガソリンを部屋と自分の身体にぶちまけ、「落ち着け!」というワシらの説得も聞かず、ライターで手ぬぐいに火をつけた。一瞬で火だるまになった男は3歩歩いて崩れ落ち、部屋中にブワーッと火が燃え広がったんや。

 男を助けるどころでないワシらは、猛烈な火と黒煙に襲われて逃げ場を失った。一酸化炭素中毒にならんよう床に這いつくばって台所の勝手口を探したが見当たらず、屋外にいる捜査員が「こりゃアカン、検死の準備をせい!」と怒鳴る声が聞こえた。さすがのワシも死を覚悟し、部下に心の中で「ごめんな」と謝った。彼らもそれを察知して3人とも涙目になった。

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