東京では小田急線に続き、京王線の車内でも“刺傷事件”が起きた。それらの報道を見て「電車に乗るのが怖い」と感じている人も、少なくないだろう。こうした心理をニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也さんは、次のように説明する。
「人は通り魔殺人のように実際に起こる確率が低いことには『それでも自分に起こるかも』と過大評価して怖がり、逆に、大雨特別警報など天災に遭う確率が高い状態には『自分は大丈夫だろう』と、過小評価する傾向があります」(篠原さん・以下同)
たとえば遠方まで行く際に、飛行機と車のどちらが事故死する確率が高いかというと、車の方が遥かに高いが、「飛行機が落ちたらどうしよう」とやたら怖がる人もいる。
「このように漠然と怖がるのではなく、さまざまな確率を客観的に評価できれば、何が怖いか、何に備えればよいかを具体的に判断できます」
長寿時代を迎えたいま、2025年に65才になる1960年生まれの男性の3人に1人、女性の5人に3人が90才まで生きる一方で、さまざまな原因で命を落とす人もたくさんいる。
「これらの統計と計算式を使えば、気になるリスクとの生涯遭遇確率(以下、生涯確率)を算出することができます」と言うのは、計量経済学を専門とする国際大学准教授の山口真一さん。
「たとえば、交通事故の年間死傷者数が約46万人と聞いてもあまりピンときませんが、生涯確率で見ると4人に1人以上となり、『自分も遭うかも』と捉えやすくなります。同様に、通り魔で死亡する生涯確率は0.0005%と低く、やたら怖がる必要がないとわかります」(山口さん)
人生にはさまざまな災難が待ち受けている。以下、交通事故の事例をもとに、どんな対策が可能なのか考えてみよう。