私が考えたPRの切り口が新聞の1面に!
では、PR会社はどのような仕事をやっているのでしょうか。その多くは、広告会社および一般企業の広報活動の下請け業務だったりもします。
企業は日々、広報活動(PR)をします。それは新商品ができたからプレスリリースという報道資料をメディアに送ったり、ホームページに掲載したり、記者会見をしたりと、様々です。あとは、商品を紹介してもらうべく、メディアに商品提供をしたり、「インフルエンサー」と呼ばれるブロガーやSNSフォロワーの多い人々にお金を払って紹介してもらったりもする。
これらの仕事を代行するのがPR会社です。広告会社の若手が言うような「アレオレ詐欺」みたいな、びっくりするような仕事はあまりありませんが、PR会社の若手もこんな言い方をします。
・私が考えたPRの切り口で、新聞の1面に出た
・オレはあの視聴率が高いテレビ番組『○○』に自分のクライアントの商品を仕込み、その後、コンビニでバンバン売れた
・あなたも見たであろうあの記者会見の演出、最後にドッカーンと花火が上がるのは私が考えた
・私は世界に名だたるVIPである、米○○社の××社長のアテンドをし、メディアのインタビューを全部仕切った
まぁ、こんな感じの仕事も実際していますが、こちらも「アレオレ詐欺」であり、広告会社よりはスケールが小さいことの方が多いです。
ちなみに、メディアの側から見たPR会社はどんな存在でしょうか。PR会社の方はキチンと最新情報の資料や写真素材を揃えてくれたりもするので重宝しているメディアもある一方で、メディアによっては迷惑に感じることもあるのが現実です。というのも「エクセルの埋め草」になっていることがあるのです。私はPR会社とも広告会社やクライアントの立場、さらにはPR会社のさらに下請けとして活動したこともあるので、その事情はよく分かっています。
「メディアプロモート」というものが彼らの大きな仕事です。平たく言えば「メディアに対して、営業活動をする」ということになります。今度こんな商品が出ます。記者会見をしますのでぜひ来てくださいね、そして、ぜひ記事を書いてくださいね、とアプローチをするわけですが、このメールや電話でのアプローチ(プロモート)こそが、PR会社の「血と汗と涙の結晶」なわけです。
実際にメールを送ったりしたメディアの名前をエクセルに足し、「これだけ多くのメディアにプロモートしました!」とアピールするための報告書がこのエクセルです。正直、その情報が必要ないメディアにとっては、「こっちから頼んでいるわけでもないのに、電話してきて仕事の時間を奪わないでほしい……」などと思うこともあります。しかし、彼らとしては、「仕事をキチンとした」という報告の面で、このエクセルは重要。
サラリーマンの社会はこうしたことで回っています。別にメディア業界だろうが、広告業界だろうが、PR会社業界だろうが、いずれも泥臭いことばかりしています。就活生の皆さまにおかれては、うわべだけの華やかな部分だけで就職先を判断しないようお伝えしました。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)。