さらに、患者は医療費の負担を軽減する公的制度を利用できる。FPの加藤梨里氏(マネーステップオフィス代表取締役)が解説する。
「主に『高額療養費制度』と『医療費控除』の2つが利用できます。高額療養費は診療を受けた月ごとに自己負担限度額を定めたもので、加入する健康保険に申請することで、限度額を超えた医療費が戻ってきます。
医療費控除は、年間の医療費の自己負担が一定額を超えた時に、翌年の確定申告を経て所得税の計算上で所得控除を受けられるものです」
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では具体的に治療費はいくら戻るのか。年収500万円、60代男性Aさんのケースで、申請や手続きの流れを図解した(別掲図)。加藤氏が図に沿って解説する。
「まずAさんが払った治療費は1月の手術で30万円、2月と3月の抗がん剤治療でそれぞれ15万円、合計60万円でした。それが高額療養費制度を利用することで自己負担限度額は合計25万2290円となり、差し引き34万7710円が還付されます。
さらに翌年の確定申告時に医療費控除を利用すると1万5229円が所得税から軽減され、60万円だった窓口での負担額は最終的に約23万7000円に抑えられます」
申請すればかなりの医療費が戻ってくるが、高額療養費では“月またぎ”に注意したい。
「自己負担額の上限は1か月単位で計算される点に注意が必要です。例えば、先程と同じく年収500万円の人が30日間の抗がん剤治療を行なって自己負担額が15万円のケースです。
もし治療が2か月にまたがり15日間ずつだった場合、月毎の自己負担額は7万5000円ずつとなり、ひと月の上限(8万2430円)に達しないため還付がない恐れがあります」(加藤氏)