また、病院窓口で負担した医療費のすべてが申請対象になるわけではない。
「がんの治療では高度な『先進医療』を選択することがありますが、技術料部分は保険適用外です。また、通常の大部屋ではなく人数の少ない部屋(1~4人)に入院した場合は1日数千円の『差額ベッド代』を払わなければなりません。
そのほか、入院中の食事代の一部や雑費も全額自己負担です。通院時の交通費や診断書の発行、セカンドオピニオンの費用なども含め、全額自己負担となるがんの治療費は思いのほか多いのが実情です」(黒田氏)
2014年に膀胱がんと診断されたボクシング元世界チャンピオンの竹原慎二氏(49)は、がん治療費についてこう振り返る。
「お金はとにかくかかりました。最初は抗がん剤治療を受け、その後、11時間に及ぶ全摘手術を『ダヴィンチ』というロボット手術で行ないました。当時は(手術を受けた)東大病院でも2例目の最先端治療で保険適用外だったため、手術だけで250万円。2~3か月ほど入院して、トータルで600万円はかかりました。妻が貯金をしてくれていたので助かりましたが、少しでも足しになればと、愛車のベンツSクラスを売却しました」
昨年3月にがんの診断を受け、『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社刊)を上梓したジャーナリストの金田信一郎氏(会員誌『Voice of Souls』代表)もこう言う。
「コロナ禍のがん治療で重かった負担は、通院時のタクシー代です。平常時なら電車で通えるところを、感染予防のために自宅から病院までタクシーを利用していた。私の場合は東京から千葉県の柏市まで通っていたので往復で4万円かかりました。妻に自家用車で送ってもらうこともありましたが、負担をかけてしまったことも辛かったです。
放射線治療の際は1か月半にわたって毎日通うので病院近くのホテルに泊まりました。こちらは逆にコロナ禍で値崩れしていて1泊5000円でしたが、長く続けば大きな額になる。交通費や宿泊費のことも考えておかなければと痛感しました」
いざという時の負担を減らすために、“武器”となる正しい知識を身につけておきたい。
※週刊ポスト2021年12月3日号