罹患すると高額な治療費が必要となるがんは、高額療養費制度を利用すれば医療費のかなりの部分がカバーできるが、一方で「差額ベッド代」など保険適用外の部分が多い。これをどう捉え、工面するかは人により対応が異なる。
公的保険でカバーされない部分を補うものとしてあるのが「民間の保険」だ。
まず、がんに備える民間保険の代表格は「医療保険」と「がん保険」の2つだ。自身も乳がんを患った経験をもつファイナンシャルプランナー(FP)の黒田尚子氏が解説する。
「簡単に言えば、『がんが心配』ならがん保険、『がんも心配』なら医療保険にがん特約を付ける、という考え方ができます。がん保険はがん治療に特化した保険で、診断された時に一時金(100万円程度)などが受け取れる。一方、医療保険はがんに限らず、病気やケガで入院・手術をした時に給付金が受け取れる保険です」
黒田氏は、がん保険に加入する人は「がん家系」など遺伝性がんが疑われる人も少なくないという。
「身内にがんが多いからと遺伝性を疑ってがん保険に加入した人が、初期のがんが見つかって短い期間で安く治療が済めば、一時金の使い道は自由度が高まります」
ただ、日本の医療は公的制度が充実している。まず、診療を受けた月ごとに自己負担限度額を定めた高額療養費制度がある。また、年間の医療費の自己負担が一定額を超えたときに、翌年の確定申告を経て所得控除を受けられる医療費控除もある。そうしたことから、FPの長尾義弘氏はがんによる収入減に不安がなければ必ずしも「がん保険」「医療保険」に加入する必要はないという考えだ。
「民間の保険の必要性については、がんになれば莫大な治療費がかかると思い込む“誤解”があると思います。治療費を賄わなければと焦る気持ちはわかりますが、全員が入る必要はないでしょう」
※週刊ポスト2021年12月3日号