地域循環共生社会連携協会の吉岡慎一さんも「今後、地方における教育によって多様な人材が育つ可能性が大いにある」と語る。
「確かに高等教育だけを考えるならば進学先の選択肢の多い都市部が優位ですが、教育の中身を考えると違った側面があります。特に今後は世界的な傾向としてSDGsに関心が寄せられるなど環境意識が大切になる時代が来る。そうしたときに田舎暮らしを経験した人は薪ストーブを利用するために生活圏の中で薪を調達するなど、身近な自然環境に接してきた機会が多い。
机上の勉強だけでなく五感で自然を感じて育つ人材の方が、今後求められるダイバーシティーを自然に身につけられるのではないでしょうか」
七重さんも田舎の最大の美点は「自然」だと声を揃える。
「田舎ならではの田んぼや山、きれいな川のある生活が、私にはこの上ない幸せです。ここは水道水がきれいでおいしく、その水を使った無農薬の野菜やお米、こんにゃくはみずみずしくて甘みがあります。都会から宿泊に来たかたは、その味にびっくりされます」
武田夫妻が作る野菜のおいしさやその暮らしぶりは話題を呼び、地方で生き生きと生活する人たちの暮らしぶりを伝えるドキュメンタリー『人生の楽園』(テレビ朝日系)でも取り上げられている。
地元の農作物は、時に貨幣以上の価値を持つ。
「以前、福岡県の農村地帯に住んでいたとき、その地域では物々交換も盛んであり、たくさん採れた野菜を住民同士であげたり、もらったりしていました。貨幣経済ではないシェア経済が成立し、地域資源をお互いに有効活用していたんです。こうした動きは公式の統計資料には反映されませんが、シェア経済が発展した田舎は、体感として都会よりも金銭面のゆとりが生まれているように思えました」(吉岡さん)
シェア文化に加え、そもそも田舎は都会よりも生活コストが安い傾向にある。
「公共交通機関の発達した都会と異なり、田舎は移動に車が必須で移動費用がかかります。ただし住居費や物価は田舎の方が断然安く、大分や群馬の平均家賃は東京の約3分の1しかない。コストを抑えて暮らせるのは田舎であることは間違いない」(吉岡さん)