白酒は決して高価な嗜好品ばかりではない。貴州茅台をはじめ、全国に高級白酒ブランドはいくつもあるが、一方で一般の人たち、特に農民工(出稼ぎ労働者)が飲むアルコール度数の高い酒といったイメージも強い。白酒市場全体は成熟した市場である。消費者の所得向上による購買力の高まりといったポジティブな要因もあるが、中国でも“若者のアルコール離れ”は顕著である。この市場で高い収益を上げ続けることは容易ではない。
味や香りの品質管理は当然だが、それ以上に、広告宣伝の仕方、流通の管理や、需給を細かく分析しながら、供給力を適切な速度で増やしていくといった総合的な経営力が重要だ。
8年で株価43倍に
消費関連セクターの中で最近、重慶市フウ陵搾菜集団(002507)がマスコミの注目を集めている。この会社の主力商品は搾菜(ザーサイ)。「烏江」ブランドは1436年創業の北京老舗ブランド六必居などを抑えトップブランドの地位を固めている。
四川料理の漬物であるザーサイは一般に、刻んだショウガなどといっしょにお粥に入れて食べたりする。中国全土のどこのスーパーでも売っていて、ラミネートフィルムに入った小袋(70g)の「烏江」ブランドは定価3元(54円)だ。
この業界も成熟市場であり、完全競争の中で利益を出すのは容易ではない。こうした厳しい経営環境の中で、同社は価格支配力を獲得しようとこれまで細かく値上げを繰り返す一方、超高級ザーサイを発売、ブランドイメージの向上を図っている。
贈答、宴会用の五年物高級ザーサイを一箱888元(900g、1万5842円)で販売しているが、オンライン販売の状況をみると売り切れ続出、品薄状態だ。
ただ、現状では、原材料価格の上昇による影響が大きく、値上げ、高級ブランド投入の効果は表れていない。2021年1-9月期の業績は9%増収18%減益だが、7-9月期では1%増収39%減益である。