コロナ禍で収入が減る人も多い一方、食料品や生活用品は続々と値上げ──。経済的な不安を抱えて、お金を貯めようとする人も多いだろう。しかし、貯蓄は簡単なものではない。無意識のうちにちょっとした損やムダ遣いを重ねた結果、まったくお金が貯まらないということもあるだろう。そこで、貯金ゼロ歴ウン十年だという、女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、「○○放題」に心躍らせた結果、後悔がつきまとう体験について振り返る。
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64才。飲み放題・食べ放題でわれを忘れることがなくなった。というのも50代半ば、しゃぶしゃぶ4800円食べ放題の店で苦い思いをしたことがあるの。
私よりさらに貧乏な男友達の誕生日にごちそうすることになり、2人で「お代わりお願いします」の連呼。店員が厨房に向かって「また、だって」という声がしたけど、頑張ったの。そのとき思ったのよね。普段は遠慮しながら食べる高級品を「いくらでもどうぞ」と出され、「食えるだけ食ってやる」と挑んだところでおいしく味わえるものか、と。普通に100g2000円の牛肉を買って、落ち着いて食べればいいんだって。
そんな私がまだ諦められないのが、「乗り放題」だ。JR東日本は年に3回、「大人の休日倶楽部」(新幹線を含めて4日間乗り放題のパス。1万5270円)を発売する。北海道も含めると5日間で2万6620円。
このパスを握りしめて、東京駅の新幹線乗り場前の電光掲示板の前に立つときの“無敵感”といったらない。JR東日本は、中高年が新幹線に乗って2~3泊の旅をすることを想定しているんだろうけど、“乗り鉄”の私はそんなことはしない。
朝早く上越新幹線に乗って越後湯沢で降りて日帰り温泉でひとっ風呂。それから新潟でお寿司を食べたら東京駅に戻り、牛タンを食べに東北新幹線で仙台に向かう。そして自宅に戻って寝て、翌日も翌々日も翌々々日も東京駅へ。つまり、新幹線に乗って日帰り旅を4日間するわけ。何のために? 電車に乗るためによ。
この遊び、移動費は定額だし、現地に着いても駅中のデパ地下でお弁当を買うくらいだから、激しく動くわりに大した出費ではないのよね──という話を霞ヶ関の女性官僚・Sさんにしたら、「いやいや、そうではなくて体力が続く限り、めいっぱい遊び倒すという発想そのものが危険なんです。地道に貯金をする人は、決してしない遊びです」と、真顔で諭された。
なるほど、だからか。この遊びに同行してくれる人がいまだ現れないの。