あなたは「出資」との理解ですが、出資は事業を営むための資金拠出です。営利事業なら利益配当を期待でき、廃業時に財産が残っていれば、出資分に応じた残余財産の分配を要求できますが、残余財産がなければ出資金は戻ってきません。この意味の出資であることを言いたいのであれば、その合意が必要です。
ここで物を言うのが領収書の記述です。領収書には、お金を受け取った理由が記載されます。借用金、預り金、あるいは店継続が条件などとあれば返還請求できますが、記載がなければ返金の要求は難しいと思います。
以上はお金の授受の際の店主との合意に基づく検討です。本心は店を廃業するつもりの店主から営業継続のためと言われ、信用して資金援助した場合は、騙されたことになります。資金援助の契約を、詐欺を理由にして取り消し、全額返済を請求できます。しかし、店主が嘘を言ったことを証明するのは難しいことです。
また、そもそもないところから返してもらうのは不可能です。出したお金の金額から、裁判や調停などの手続きをすることは費用倒れです。粘り強く返金を請求するしかないでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2021年12月9日号