ちりも積もれば山となる──この言葉は、お金を貯めている人にも、貯まらない人にもあてはまる。貯まらない人は、無意識のうちにちょっとした損やムダをしていることが多いのだ。50才のときに貯金ゼロのわが身を憂い、思わず顔をしかめたという女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子さんに、自身のムダ遣い経験を告白してもらった。
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男が車のローンの名義を免許のない私に書き換え、1年4か月住んだ団地の家賃を1か月分しか払わずに家を出ていったのは、もうすぐ30才になろうという秋のこと。……まぁ、いま思うと気が立っていたんだね。別掲のグラフにもあるけど、ストレスがたまったとき、私の場合、衝動買いに走るのよね。
男を憎んでも恨んでも気が収まるとは思えない。で、何をしたか。通りすがりの呉服店にふらりと入った。そのときから、何でもいいから買おうと決めていたのよね。肩幅44cmの衣紋掛け体形で着物が似合うとは思えないし、第一、着物着てどこ行くの。まともなときだったら、絶対買わないって。
で、散財の目的は男の残債に自分のムダ遣いを合わせて、男の影を薄めること。明日から男の尻拭いをするために働くのではないと思い込むためにはどうしても買わねばならない、とそのときはそう判断したんだから、ちょっとどこかおかしかったんだよね。
それでも、ちょうどその頃、世の中はバブルが膨らみ出して、私のような木っ端ライターにも仕事の注文がわんさときて、あっという間に借金完済。めでたしだったんだけどね。で、無借金で身軽になったら、なんだか急に寂しくなってきて麻雀を覚えて、今度は正真正銘、自分の借金で首が回らなくなったというお粗末。
だけどこういうことって2回とできないし、そんなバカはもうしたくたってできないって。だからいまは、気持ちが波打っているときは100円ショップで大散財している。えっ、金額こそ下がったけど、やってることは変わんないって? ほっといてよ。