【ADVICE】人は中間を選びたくなる
「松・竹・梅」「特上・上・並」のように3つの選択肢があると、人は中間を選びたくなる心理が働くとマーケティング&ブランディングディレクターの橋本之克さんは言う。
「人は選択肢を1つか2つ提示された場合、物足りず、網羅されていない印象を受けます。逆に、4つ、5つと選択肢が増えると、それぞれの違いを把握しづらく、選びきれなくなってしまう傾向があります。3という数字が『マジックナンバー』と呼ばれるのはそうした理由からです。3つの選択肢のうち、価格や品質がともに低いものや高いものを避け、無難な中間を選ぼうとする心理は『極端回避性』と呼ばれます」
飲食店などではそうした心理を利用して、「竹」や「上」に誘導することがある。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんが解説する。
「店側は真ん中のメニューが選ばれやすいことをよく認識しています。そして、そのメニューがいちばん利益率が高まるように価格や品質を設定するのです。たとえば定食屋さんなどで〈松・竹・梅〉とあったら客側は、『松はおいしそうだけど高い。竹は手頃。梅はケチった感がある』と思うものです。でも、実は消費者にとってコストパフォーマンスがいいのは〈梅〉で、一品少ないとかサイズが小さいといった違いはあっても、質が大きく下がるわけではありません」
実際、常連さんは〈梅〉を頼む傾向があるという。
「全部食べてみて〈梅〉や〈並〉でいいと判断するかたが多いですね。私もお気に入りのカレー店で最初は1200円のコースをオーダーしましたが、何度も通っているうちに、カレーとナンが食べられればいいとなり、いまは800円の〈並〉に落ち着きました」(丸山さん)
【プロフィール】
野原広子/「オバ記者」の愛称で知られる。1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学 現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。
丸山晴美さん/消費生活アドバイザー、節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー。著書に『「貯まる女」になれる本』(宝島社)など。
文/野原広子 取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2021年12月9日号