特に怖かったのは刑事出身で暴力団を相手にしとった鬼瓦のような教官や。講義中にトンチンカンな答えをすると、「こんなこともわからんのか! タワケモン!!」とゲンコツを食らった。同期は怒られんのに「何でワシだけ?」とも思ったが、何が何でも刑事になりたいから必死に食い下がった。そして迎えた卒業式、厳しかった“鬼瓦教官”から「秋山ぁ、お前には期待しとるでえ」と言われた時は、さすがにホロリとしたなあ。
警察学校の成績は悪かったけど、「やる気」に能力の差はない。ワシは新米刑事時代もリーゼントや服装を上司に咎められてイビられたが、心は折れんかった。だからこそ、定年退職後に一日署長を務めるまで成長できたと思っとる。
今も昔も、若手警官はやる気満々の子ばかりだから、頑張れば必ず結果がついてくる。イチローや大谷翔平も初めてバットやボールを握った時は、全くの素人だったはず。だからみんなも今からがスタートなんやと伝えたかった。
現役バリバリの「ゆとり世代」にとって、警察組織の厳しさはワシらの頃の10分の1かもしれん。命を張る仕事にパワハラも何もないと思うが、時代が変わったから仕方ない。それでも若い子らは初志貫徹して、立派な警察官になってほしいもんや。ほなっ、また!
【プロフィール】
秋山博康(あきやま・ひろやす)/1960年7月、徳島県生まれ。1979年、徳島県警察採用。交番勤務、機動隊を経て刑事畑を歩む。県警本部長賞、警視総監賞ほか受賞多数。退職後は犯罪コメンテーターとして活動。YouTube「リーゼント刑事・秋山博康チャンネル」が話題。
※週刊ポスト2021年12月10日号