田代尚機のチャイナ・リサーチ

オミクロン株に救われた米国 原油価格下落、米国債安定で窮地を脱す

インフレが進めば米国債券市場に危機も

 原油(先物)価格の上昇で困るのは、日本や欧州の主要国(イギリスを除く)など、非産油国だけではない。足元で物価が上昇、金利の先高懸念の強まっている米国も同様だ。インフレが手に負えなくなれば、安全資産の頂点にあり、国際金融市場の要ともいえる米国債券市場が危機的状況に陥るリスクがある。

 バイデン政権にとっては、大統領の支持率低下が深刻となる中で、市民に強い不満を与え、経済的な大混乱を引き起こしかねない原油高は、なんとしても避けたいところでもある。

 米国は世界最大の産油国であり、シェールオイルの増産能力は十分あるはずだが、バイデン大統領は11月に開かれたCOP26において、各国に対して気候変動対策の強化を訴えたばかりである。トランプ前大統領とは正反対の姿勢だ。そもそも、石油業界は伝統的に共和党支持者が多い。政治的な要因も加わり、政府主導で増産を呼びかけるわけにはいかないといった事情がありそうだ。

 バイデン大統領は11月23日、石油の国家備蓄を5000万バレル放出すると発表。日本政府も24日、米国の要請を受けて石油の国家備蓄を放出することを決めた。インドや韓国などもこれに追従する意向である。ちなみに、中国は既に9月の段階で、国家備蓄を放出している。

 しかし、国際協調の動きがあったにもかかわらず、バイデン大統領が打ち出した切り札ともいえる政策は効かなかった。原油先物価格は22日に一旦底打ちすると、24日には高値79.23ドルまで上昇した。

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