米国にとっては都合の良い結果
こうした背景で原油先物価格が高騰していたタイミングで、今回の急落が起こった。
世界のマスコミは11月26日、新型コロナウイルスの「オミクロン株」の発生を大きく報じ始めた。それによって、金融市場は一変。先週末のグローバル株式市場は急落する一方で、リスクマネーは安全資産としてドルを選好、米国債に資金が流入し、金利は大きく低下した。米国債(10年)は24日には1.64%であったが、休場明けの26日には1.48%まで下落した。29日には少し戻したが、それでも1.50%前後で安定した動きとなっている。
オミクロン株については、感染力、重症度、ワクチンの効果など、まだ不明な点も多い。そうした点が明らかになるまでは、市場のはっきりした方向性が出てこないかもしれない。
11月29日の米国株式市場は下げ止まっている。情報に振り回されて右往左往する投資家には厳しい結果となりかねない相場である。
マスコミが突如として洪水のように流し始めたオミクロン株のニュースによって、とりあえず、米国債券市場は落ち着きを取り戻している。意図的なものではないのだろうが、米国にとって都合の良い結果である。このまま、株式市場も戻してしまうのだろうか。
思いがけないことが頻繁に起きる。正統的なミクロ、マクロ分析が役に立たないばかりか、裏目に出てしまうような難しい相場である。現在の世界経済は、私たちが考えている以上に、政治的、経済的に異常な(不安定で危機的な)状態なのかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。