近く発表される2022年度税制改正で、控除率の縮小が検討されている「住宅ローン減税」。現行の制度では、原則10年間(要件を満たせば13年間)にわたって年末のローン残高の1%(最大50万円/長期優良住宅の場合)が毎年住民税、所得税から控除される。しかし改正後は、控除率が1%から0.7%へと引き下げられる見通しだ。
例えばローン残高が5000万円以上ある場合、単純計算でこれまで10年間で最大500万円が控除されていたところ、控除率が0.7%に引き下げられれば、その額は最大350万円となり、150万の差が生じることになる。
控除率引き下げによる住宅市場の落ち込みを避けるため、政府は控除期間を現行の10年から15年などに延長することも検討しているというが、控除率縮小のインパクトを考えると、家の購入を検討している人にとっては改正前に急いで“駆け込み購入”すべきか悩ましい状況ではないだろうか。実際のところどう判断すべきなのか。家計の見直し相談センター代表でファイナンシャルプランナーの藤川太氏は、冷静な判断を呼びかける。
「まず念頭に置いてほしいのは、不動産購入にあたっては、住宅ローンの減税額よりも物件価格そのものの方が金額的なインパクトが大きいということです。確かに減税額も小さくはありませんが、物件価格は値引き交渉や値崩れなどで500万円ほど下がることも珍しくありません。トータルで考えれば物件価格のインパクトの方がはるかに大きい」(藤川氏、以下同)
不動産経済研究所が11月18日に発表した首都圏新築分譲マンションの1戸当たり平均格は、前年同月比10.1%増の6750万円。コロナ禍にもかかわらず、不動産価格は1990年のバブル期の6414万円を超えて過去最高となっている。そう考えると、いま焦って買うのは損なのか。藤川氏は「一概にはそうとも言えない」と語る。
「注意したいのは、果たして今が高値のピークなのかということ。足元の状況を見ると、まだまだ不動産価格は下がりそうもありません。コロナ禍の人手不足で、生産から物流までありとあらゆるところで“目詰まり”を起こしており、原油をはじめ資材価格も高騰が続いています。『ウッドショック』と呼ばれるように、木材や鉄などの住宅資材は世界的に高騰し、高まる需要に対して供給不足が拍車をかけ、物件価格が高止まりしているのです。
そこに加えて職人の高齢化が進み、建設業界も人材不足の状況が続いている。当面は人件費も下がる見通しはありません。この分だと資材価格と人件費の高止まりがしばらく続く可能性も十分考えられます。不動産市況はバブルのような状態と考えていますが、今後はもっと高くなり、振り返ると“いまの方が安かった”となるかもしれません」