2022年以降、「相続」に関する制度が大きく変わる見込みであることをご存じだろうか。今までのように、お金を子供や孫に渡すことは難しくなり、住宅資金の贈与の非課税枠も廃止される。配偶者が亡くなった後はどうするのか──年内の今が、お金の最新事情に追いつく最後のチャンスだ。
これまで、相続税対策の定番は、生前贈与の非課税枠を使って、資産をあらかじめ減らしておくことだった。ところが、2020年12月にまとめられた「令和3年度税制改正の大綱」に盛り込まれたように、今後は生前贈与の非課税枠が実質的に廃止、または縮小される見込みとなっている。
現在「年間110万円までの暦年贈与」は非課税だが、実は、亡くなる3年前までに贈与した分は相続財産扱いとなり、相続税が課せられる。その対象を、なんと10~15年前の分までさかのぼる検討が進んでいるというのだ。
また、「教育資金は1500万円まで」「結婚・子育て資金は1000万円まで」など、贈与税の非課税枠は多いが、これらも相続扱いになるかもしれない。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが言う。
「もともと、教育資金や結婚資金の非課税枠は2023年3月までの期間限定で設けられたもの。あと1年ほどで終わるものですし、そもそも対象の人がいなければ使えません。例えば、教育資金は贈与を受ける子や孫が30才の時点で使い切っていないと、贈与した人が亡くなったときに相続扱いになり、相続税は2割加算になります。また、直接学校に支払う場合は1500万円まで非課税になりますが、塾などに支払う場合は500万円までしか非課税にならない。もともと、使い勝手のいい制度ではありませんでした」
やはり、新制度が施行される前に「年間110万円までの暦年贈与」をしておくことが賢明だといえる。相続実務士で夢相続代表の曽根恵子さんが説明する。
「あらかじめ贈与しておけば、後々の相続争いを避けることにもつながります。贈与には相互の意思確認が必要なので、契約書は2通作成し、贈与した側・受けた側の双方が持つようにしておきましょう。贈与契約書のフォーマットに決まりはなく、『日付』『本人たちのサイン』『印鑑』『金額』が書いてあれば充分です。暦年贈与をするたびに、年に1回ずつ契約書を作成しておくことをおすすめします」