しかし、けがの治療費や慰謝料の請求には、事故後に感じた肋骨あたりの痛みや診断された骨のヒビがその衝突で起きたことを証明する必要があります。この点は、医師の診断書のほか、防犯カメラの映像で、当たった体の部位や当たりの強さがわかると役立ちます。
その一方で、防犯カメラの映像であなたの何らかの不注意が明らかになれば、過失相殺の対象として賠償額の減額要因になることもあります。問題は防犯カメラの映像だけで男性の特定は難しいという点です。画像が鮮明でなければ困難ですし、顔や服装などがわかったとしても、どこの誰だかわからないと賠償請求のしようがありません。
しかし不注意で人にぶつかってけがをさせる行為は、不法行為という民事の問題だけでなく、「過失により人を傷害した」過失傷害の罪になり、30万円以下の罰金または科料で処罰される刑事事件になります。ただし、過失傷害は被害者が告訴しなければ処罰されません。
そこで、加害者がわからなかったり、人物を特定できたのに責任を認めないときは、衝突事故が起きた顛末をまとめ、診断書や防犯カメラの映像のデータを添えて警察に持参し、相談することをおすすめします。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2022年1月1日号