海運株は銀行や商社と並んで財閥系銘柄の象徴的な存在である。その海運株をはじめ財閥系銘柄には大きな強みがある、と天野氏は分析する。
「東芝が3分割することを発表したように、いま分社化がトレンドとなっていますが、分社化によって経営効率を高められたとしても総合力の部分に欠ける。一方、財閥系企業はかつてのような密接な関係ではありませんが、何かあれば連携して対応できる結束力がある。企業連合の総合力が財閥系の強みといえます」
2000年代に三菱自動車がリコール隠しで経営危機に陥った際、三菱重工業と三菱商事、三菱東京UFJ銀行(当時)の“御三家”が救済した。ここぞという時に一緒になって動くグループの結束力はいまも残されているという。
「だから経営が不振でも、財閥系企業なら大丈夫ということで、株価が安値で拾える安心感もある」(天野氏)
財閥系企業ならではの総合力と安心感から株価上昇が期待できるのなら、それに乗らない手はないだろう。そこで、天野氏が注目の財閥系18銘柄を厳選、別表にまとめた。
配当が高い傾向
まず安心感の高い財閥系銘柄のなかでも株価上昇が望めるのは、これからM&Aや新技術の開発などでビジネスを拡大する材料が期待できる企業だ。
「三菱系のENEOSホールディングスは石油元売り国内最大手で、世界的な脱炭素の流れのなかで水素やLNG(液化天然ガス)、再生可能エネルギーを含めた総合エネルギー企業への脱皮を図っています。
三井系では、三井住友トラスト・ホールディングスがSBIホールディングスとの合弁出資であるネット専業銀行の住信SBIネット銀行の上場準備を進めており、上場後の収益増が期待できるでしょう。
住友系では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とロケットや衛星、宇宙探査機の姿勢制御に使用する小型慣性センサユニットを共同開発する住友精密工業などに注目です」(同前)