さらに、EV(電気自動車)や半導体といった、今後の成長が期待される分野で活躍する企業も要注目だ。
天野氏は、三井系では、EVの急速充電スタンドなどで実績を持つ日本ユニシス、車載電池向けセパレータ用フィルムシート製造装置で高い世界シェアを誇る日本製鋼所などを挙げる。
同じくEVでは、住友系の明電舎がEVやHV(ハイブリッド車)の駆動用モータ・インバータに積極投資を行なっており、今後の業績への寄与が見込めるほか、EV充電器を手がける日新電機も有望だという。
半導体では、三菱系のニコンが半導体露光装置を手がけるほか、3Dプリンタ、メディカル、ロボット分野に手を広げている。
「財閥系企業のビジネス分野を見渡すと、ITと医薬関連に弱みがありますが、三菱系のキリンホールディングスはグループの製薬会社の協和キリンがバイオテクノロジーや抗体医薬に強く、医薬分野を拡張していく可能性に期待が持てます。
ほかにも、三井化学が医療機器を手がける日本MDMと資本業務提携を発表したほか、住友精密工業なども医療機器分野への参入を図るため、M&Aを進めるのではないかと見られています。財閥系企業は財務力もあり、医薬のほかIT分野でもポテンシャルは期待できると思います」(同前)
株価は「半年先を映す鏡」といわれるように、半年後の業績を先取りする。
「株を大量に売買する機関投資家は配当を得られる3月末をまたいで保有しようという意識が働き、少なくともここから半年は株価も好調が続くと見られます。そして、海運株をはじめ銀行や商社など財閥系銘柄は総じて配当が高い傾向にあります。株により安定性を求めたい人にとって、財閥株は配当狙いで長期保有するような活用の仕方もあるということです」(同前)
コロナ禍を経て日本経済が立ち直ろうとするいまこそ、財閥系企業の銘柄に注目したい。
※週刊ポスト2021年12月24日号