「シリコンアイランド」復活も
しかも九州は、福岡だけが元気なわけではない。九州新幹線網と高速道路網の整備により、九州としての一体感が醸成されて相乗効果が生まれてきている。
たとえば、九州新幹線の博多~鹿児島中央は最速の「みずほ」なら所要時間はわずか1時間20分ほどだ。来年秋頃には西九州新幹線の武雄温泉~長崎間が開業する予定である。高速道路網も、東側の大分県と宮崎県の間は途切れているが、ほぼ九州各県がつながり、現在も整備が進んでいる。
さらなる朗報は、台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が熊本に工場を建設することだ。これに対して政府が約4000億円の補助金を出す点など疑問はいくつかあるが、地元にとっては雇用が増えて多少なりとも経済が活性化するのは間違いない。
九州にとって、新型コロナ禍でインバウンドが止まったのは、かえって良かったかもしれない。なぜなら、新型コロナ禍以前は、常に客船2隻で約8000人、バス200台分もの外国観光客が九州各地に殺到して、にっちもさっちもいかなくなっていたからだ。今は世界的な観光地になるための構想をじっくりと練り、アフターコロナ時代に向けた準備を進めるべきだろう。
以上すべてを考え合わせると、九州は潜在的な総合力で国内ナンバーワンの地域だと私は思う。中国のメガリージョンの代表である深セン・広州とのつながりも深いし、上海や山東半島あたりも漁船が日帰りする距離だ。それは言い換えれば、道州制=クオリティ国家の延長線上にあるメガリージョンの最適モデルだ、ということである。伝統的に強い漁業や農業だけでなく、半導体をはじめとする先端産業と豊かな観光資源の強みを活かして経済発展を実現し、他の地域のお手本になってもらいたい。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は『世界の潮流2021~22』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』等、著書多数。
※週刊ポスト2021年12月24日号