こうした現状を踏まえ、次のような扱い事例が示されています。
まず、認知能力の低下した預金者の親族に法定後見制度の利用を促し、手続き完了までの間は本人との間で、本人のための費用の支払いであることを確認するなどした上、対応することが望ましいとされています。また、預金者本人から、親族等への有効な代理権付与が行なわれ、銀行がその代理人の届出を受けている場合には、当該代理人と取引を行なうことも可能とされています。
つまり、銀行に届け出た代理人は、預金者の認知能力が低下しても、預金の引き出しができます。この制度が利用できれば安心ですが、手続きは預金者本人が行なうもの。すでに認知能力が低下していると、委任の効力が問題になり、受け付けられない可能性もあります。
お母さんは、認知症が進行しているようですから、かかりつけ医の認知能力低下の診断などをもとに考慮し、成年後見制度の利用を検討されてはいかがですか。
手続きは、最寄りの家庭裁判所に相談してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2021年12月24日号