今回のデフォルト騒ぎは、恒大集団が当局の指導から大きく逸脱した拡大路線を長年続けてきた結果である。“住宅は住むためのもので、投機の対象ではない”。同社を筆頭に業界全体が投機を助長するような拡大戦略を長年採り続けてきたが、これ以上許容できなくなった共産党が、強力な国家権力によって、唐突に財務面でのルールを“後付け”するといった強硬手段で、バブルを退治し、同社を厳しく粛清しようとしているというのが実態である。
当局が主導して現在のデフォルト騒ぎが起きている以上、当局は用意周到に対処を進めている。国内金融機関は貸し渋りも、貸し剥がしも到底許されず、債務不履行リスクも経済に影響が出ると当局が判断すれば、追い貸しでも、モラトリアムでもあらゆる方法を以て対処されることになる。
一方で、問題企業は存続に向けて必死の努力を続けることになり、できなければ解体、資産売却される。利害関係者間の話し合いを重視するとはいえ、まとまらなければ最終的には当局の裁量で処理案は落ち着く。“強力で迅速な対応ができること”、それが他の先進国にはない中国金融行政の最大の強みでもある。
こうして見ると、国内金融市場が大きなダメージを受ける可能性は低い。だが、そうした実態に関して、海外のマスコミが報じることはほとんどない。それどころか、一部のマスコミは、この問題がグローバルな金融危機を引き起こしかねないと報じてきた。これに対して欧米金融機関はどう考え、どう対応したのだろうか。
中国当局が望まない人民元高
人民元の上昇が続いている。恒大集団のデフォルト懸念が大きく広がったのは7月以降だが、人民元対ドルレートはその前の5月を安値にしっかりとした上昇トレンドが発生している。
12月9日には一時、1ドル=6.343元まで人民元高が進んだ。これはトランプ大統領が本格的に中国製品に懲罰関税をかけ始める直前の2018年5月以来の高水準だ。
しかも、この人民元高は、決して当局が望んだことではない。中国人民銀行は12月9日夜、金融機関の外貨流動性を管理するため、外貨預金準備率を2ポイント引き上げ、9%にすると発表した。実施は12月15日からである。
中国人民銀行は6日夜、預金準備率を0.5ポイント引き下げると発表したばかりであり、実施は同じく12月15日からだ。当局は人民元の流動性を高める一方で、外貨については引き締めようとしており、明らかに人民元高を警戒している。