寺尾氏にとってターニングポイントになったのは、2010年に発売した扇風機「グリーンファン」だった。寺尾氏本人が語る。
「2003年に私一人で創業し、モノづくりをしていましたが、リーマンショック以降受注がストップ。倒産を考えたタイミングで、最後の勝負として『次世代の扇風機をつくろう!』とグリーンファンを発売しました。当時は高額で絶対に売れないと言われた3万円台のグリーンファンは節電効果や風の気持ち良さが認められて人気が出ました」
倒産の危機を乗り越え、その後はトースターなどヒット商品を連発。直近ではスマホの発売も話題となった。349億円の資産を持つまでに至った寺尾氏の会社経営における信条は何か。
「グリーンファンのヒットから、人々が必要としているのはモノではなく、その先にあると考えるようになりました。家電にどういった価値ある体験を提案すると喜んでいただけるかを考え、常識にとらわれないモノづくりをしています」
令和の「新・長者番付」には長く日本経済を支えてきた名門一族から、革新的なビジネスを興した起業家まで幅広い大金持ちが同居している。
【ランキング表はユーレットが11月末までに公表された上場企業約4000社の有価証券報告書から保有金額などをデータ化した「大株主ランキング」を基に、本誌が作成した。表の「保有金額」は、ユーレットが有価証券報告書の「最高株価」に持ち株数をかけて算出。「肩書き・続柄」は一部省略して記載。肩書きや年齢などは本誌調べ。肩書きが不明な場合は保有する株式の銘柄を記した。不明な場合は「─」とした】
※週刊ポスト2022年1月1・7日号