糖や乳酸を酵素で分解して発電するバイオ燃料電池。東京理科大理工学部准教授の四反田(したんだ)功氏が原料として着目したのは、なんと人間の汗や尿だ。汗や尿に含まれる糖や乳酸を、酵素で分解して発電する仕組みを考案。燃料電池の役割を果たすのが、酵素を塗った黒インクが印刷された1枚の手のひらサイズの和紙だ。これに電球をつなぐと点滅したり、センサーとして計測したりできる。
この和紙製のバイオ燃料電池は薄いので、体に貼ることができるし、衣服に直接印刷することも可能だ。つまり、人体発電を行なうといっても良い。誰もが電源を気にせずに、身近にあるスマホやデジタル機器を使える日が来るかもしれない。
今、実用化で想定するのは、医療、介護、健康などの分野でのウエアラブル生体センサーだ。反応する物質の濃度によって発電量が変化するため、それ自体が尿糖や乳酸を計測するセンサーとなる。
例えば、尿に含まれる糖から血糖値を測定できるので、注射器で採血する必要がなくなる。紙おむつに取り付ければ、無線機を通じて、患者のおむつの交換のタイミングを介護者に知らせる。また、作業着にプリントすれば、汗から検知される乳酸値から疲労度を検知し、作業員の健康を守ることも可能だ。
太陽光や風力などと異なる期待がされるバイオ燃料電池について、「電源の多様化は必須。様々な技術が補完し合い、地球温暖化に貢献したい」(四反田氏)
※週刊ポスト2022年1月14・21日号