ベルサイユ宮殿の芝刈り
岡山県にあるカーツは、従業員数94人の中小企業だが、百寿企業に名を連ねる。主に園芸機械を製造・販売する同社は、自社ブランドかつメイドインジャパンに徹底してこだわっている。創業者の勝矢定氏は、1922年に溶接所として創業したのち、農業用発動機(エンジン)の開発に目を付けた。
だが戦後に財閥系大手の参入が相次ぎ、コストや品質で太刀打ちできず、発動機から撤退せざるを得なくなった。転機が訪れたのは1965年の初頭だった。同社の勝矢雅一社長が語る。
「次の主力製品を探して欧州を視察した先代社長が園芸機械に商機を見出し、エンジンは外部調達に切り替え、芝刈機や草刈機の製造開発を始めました。プロの整備業者が最も要求する『耐久性』に徹底的にこだわり、モノづくりを進めました。その結果、海外でも第一線級の整備業者から支持されるようになりました」
プロ用に特化した製品は現在、フランスのベルサイユ宮殿やイギリスのバッキンガム宮殿、英サッカー・プレミアリーグのスタジアムの芝の手入れにも使用されている。勝矢社長は「次の100年」を見据える。
「大手メーカーが電動シフトによりエンジンの製造開発から撤退していますが、弊社はあえてエンジンの開発を再開します。これから先は、脱炭素を実現する自社エンジンにチャレンジしたい」