塩干物売りから有名スーパーへ
地域に根差した戦略とともに百寿を迎える企業も多い。名古屋に本社を構えるヤマナカは、名古屋市民なら誰もが知るスーパーマーケットだ。もともと創業者の中野冨七氏が塩干物を売ることから始めた小売店で、戦後には二代目の中野富彦氏が、対面販売が主流だった小売業に、客が商品を選んでカゴに入れるセルフサービス方式をいち早く導入した。
大きな危機を迎えたのは、約5000人の死者・行方不明者を出した1959年の伊勢湾台風の時だった。同社の三代目・中野義久社長が語る。
「被災直後は品不足で食料品の仕入れ値が高騰しましたが、販売価格に上乗せすることはなく、普段と同じ値段で販売を続けました。その時には、被災で苦しむ地域住民の方々から多くの感謝の声をいただきました。伊勢湾台風の時の話は、60年以上経った現在も社内で語り継がれています」
地域住民とともに台風を乗り切った同社は、1997年にまだ名古屋では珍しかった高品質スーパー「フランテ」を出店。その際も忘れなかったのは「地域住民のニーズ」だ。
「高品質にはこだわりつつ、地元の方が大好きな地場商材を販売するなど、お客様のご要望に応える商品ラインナップを心がけました。お店が100年続いたのも、地域のお客様のために真面目に商いを続けてきたからだと思います」(中野社長)