コロナ禍で多くの企業が疲弊し、苦しい経営を強いられるなか、2022年に創業100年を迎える「百寿企業」がある。それらの企業にはあくなき挑戦や発想力、世界の変化に応える適応力など、さまざまな特徴がある。「百寿企業」に“長生き”の秘訣を聞いた。
自動車用アンテナなどを製造するヨコオ(東京都北区)は、関東大震災の被害に見舞われた。創業2年目のことだった。同社広報・株式部部長の多賀谷敏久氏が語る。
「創業者の横尾忠太郎は、起業前は丁稚奉公先で精密パイプの腕を磨いた後、貸自転車業として都内で事業をスタートさせました。地震による火災で社屋が焼失しましたが、1か月で立て直して再開すると、お客様への対応の親切さもあって繁盛しました」
大正末期、廃業となった奉公先の取引先だった時計メーカーからの依頼をきっかけに、時計などの部品に使用される精密パイプ加工に仕事を転換した。その後、昭和初期の1930年頃に発明した、腕時計の本体とベルトをつなぐ「バネ棒」は、腕時計ブームのなかで世界シェア1位を獲得した。
「戦後、1960年代には携帯ラジオに使われる『ロッドアンテナ』が大当たりしました。1970年代にオイルショックで経営が傾いた際は、生き残りをかけて、『回路検査用コネクタ』など自社の技術が活かせる新しいエレクトロニクス分野に活路を見出しました」(多賀谷氏)
その後、世界初となる自動車用アンテナの「マイクロアンテナ」や近年では「ガイドワイヤ」という医療用機器を製造・販売するなど事業を拡大し、海外に多数の工場を持つ百寿企業に成長した。
「ひとつの事業に依存することなく、時代に先駆けて様々な事業に挑戦し、新たな技術を導入してきたのが弊社の強みです。また、かつてのロッドアンテナからの撤退など、立ち行かないと判断した事業はスパッと見切りをつけられる決断力も会社が100年続いた要因でしょう」(同前)