新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅に減少し、経済活動の再開が本格化している。特に、時短や休業要請などで打撃を受けた飲食店は、コロナ前の日常を取り戻すべく意気込んでいるようだ。だが実際のところ、飲食業界はまだまだ「復活」と言うには程遠い状況が続いている。苦境が続く飲食業界の現状について、社会問題に詳しいライターの奥窪優木氏がリポートする。
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約2年に及んだコロナとの戦いも、ようやく一筋の光が見えつつある。しかし、一般社団法人日本フードサービス協会が公表している外食産業市場動向調査によると、2021年11月の「パブ・居酒屋」の売上高は前年比で96.8%、前々年比で51.9%にとどまった。11月は全国で時短営業や酒類提供の制限が解除されていたにもかかわらず売上は前年割れとなり、コロナ前との比較では半減。期待とは裏腹に依然厳しい状況が続いている。東京・渋谷区でバーを経営するAさん(50代)が話す。
「ようやく11月から通常営業が可能になりましたが、売上はコロナ前の水準と比べて4分の1程度と、まだまだ安心できない状況です。うちのお客さんは半分以上が近所の常連さんで、週に一度は仕事帰りなどにふらっと寄ってくれていました。コロナが明けたら客足も戻るだろうと思っていましたが、長期間の自粛生活で、外でお酒を飲む習慣が絶たれてしまったことが原因でしょうか、常連さんはほとんど離れてしまいました。
以前は3日に1度のペースで来てくれていたあるお客さんも、2021年6月にお店に来てくれたっきり。その時、オレンジジュースのグラスを傾けながら話していた『コロナで飲みに行かなくなってから勝手にお金が貯まる。今までいくら酒にお金を使っていたかを思い知らされた。飲まないと体調も良い』という言葉が忘れられません。まるでうちの店への『決別宣言』のようでした」
東京・中央区の居酒屋の女将、Bさん(60代)も青色吐息だ。
「緊急事態宣言や時短要請が解除されても、うちみたいなオフィス街にある店は、職場の飲み会が復活してくれないと商売になりません。前年に引き続き、忘新年会の予約もほとんど入らなかったし、この先どうなるんでしょうか……」