半導体不足で業務用冷蔵庫も納品待ち
東京商工リサーチが12月に実施した企業向けアンケート調査によると、「忘年会、新年会を開催しない」と回答した企業は79.4%にのぼる。昨年12月の94.2%と比べれば回復基調にあるものの、以前のレベルに戻るには時間がかかりそうだ。飲食店にとっての懸念材料は、客足の戻りだけではない。
「魚介類から肉類、冷凍のミックスベジタブル、植物脂まで、輸入食材は軒並み10%以上値上がりしています。原価率が4割、利益率が5%程度のうちの店にとってはかなりの痛手です」(Bさん)
このところ、原油価格の高騰に加え、コロナ禍の人手不足による生産縮小や輸送コストの上昇などにより、世界的な食料価格の値上げが続いている。“庶民の味方”の牛丼業界でも輸入牛肉の高騰を背景とした値上げが広がっているが、個人経営の小規模飲食店にとっては、なおさら原材料の高騰は死活問題に直結する。また、コロナ禍の生産・物流の停滞は世界的な半導体不足も引き起こし、飲食業界にも影響が広がっている。神奈川県内でカフェレストランを営む、Cさん(30代)が話す。
「業務用冷蔵庫が故障したので買い替えようとしたところ、半導体不足の影響で納品は2か月待ちと言われました。仕方なく、冷蔵が必要な食材を使うメニューを減らしたりして凌ぎましたが、緊急事態宣言下での売上の落ち込みを取り戻そうとしていた矢先のことだったので、痛い機会損失でした。知り合いがやっているラーメン店でも、同じ時期に業務用給湯器を新調しようとしたところ、やはり半導体不足の影響で納期未定と言われ、まだ納品されていないそうです」
多額の協力金が“仇”に
一方で、時短要請などに応じた飲食店に支給された政府の協力金が、かえって“仇”となる例もあるようだ。都内でラーメン店を経営するDさん(40代)が話す。
「2021年は、合計1200万円以上の協力金を頂いたことで、ほとんど働かずに過去最大の収入になりました。これ自体はとても助かるのですが、問題なのが全て課税対象になること。店はほとんど開けていなかったので、経費として計上できるのは家賃と光熱費合わせて70万円程度。これを差し引くと1000万円を超える年間所得となり、200万円以上の所得税と住民税がかかってしまいます。また、所得に応じて国民健康保険料も大幅に値上がりするようです。
そこで、『どうせ税金を取られるくらいなら』と思い、協力金を元手に2号店をオープンさせました。経費を損金として計上すれば、税金を圧縮できますから。幸い、コロナ禍でつぶれた飲食店の居抜き物件を契約できたので、通常より安く済みました。ただ、オープンして4か月になりますが、オミクロン株の登場で思うように客が入らず赤字が続いています。こんなことなら、節税なんて考えなければ良かった……」