住まい・不動産

賃貸退去時の敷金返還トラブルに悩まされる人たち「納得いかない!」

「最悪、弁護士を立てる」と脅かされたが…

 敷金なしの物件で退去時に思わぬ請求をされて驚いた人もいる。メーカーに勤める20代女性・Bさんは、1年未満の入居にかかわらず、身に覚えのない修繕費用を請求された。

「8か月くらいしか住んでないのに、壁紙の張り替え、入居前からあった傷の修復、鍵交換などを理由に、20万円近く請求されました。規約には1年未満の退去でも違約金はなかったし、そもそもきれいに使っていたので私には過失はないはず。それなのに、納得いきませんよね」(Bさん)

 管理会社に電話で問い合わせたBさんだったが、「最悪、弁護士を立てる可能性もある」ことをほのめかされ、たじろいでしまったという。だが、Bさんの兄が電話に代わったことで形勢が逆転し、相手側の態度が変わった。

「兄は先方により詳細な請求書を作成してほしいと提案。国民生活センターに問い合わせ、適正価格なのか精査してもらうと伝えました。それでも裁判を起こすというのなら、こちらも弁護士を立て、訴訟を辞さないと堂々と反論してくれました。結果、なぜか部屋のクリーニング代だけで済みました。もしかしたら女性だからと、なめられていたのかもしれません」(Bさん)

 国土交通省が発表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされている。つまり、「通常の使用」の範囲内で生じた傷や劣化については、基本的に入居者が修繕費用を負担する必要はない(ただし、鍵交換費用については「賃貸人が負担することが妥当」とされている)。もちろん貸主側はそれを知っているのだろうが、“慣例”として敷金を没収しようとする例は少なくないようだ。

10年住んだマンションの大家から“お祝い金”

 一方、長年住んだ物件にもかかわらず、敷金がほぼ全額返金されたうえ、“お祝い金”までもらったという人もいる。専門商社に勤務する30代女性・Cさんは、大家の老夫婦が1階に住む小規模マンションに、学生時代から10年近く住んでいて、結婚と同時に退去した。当時のエピソードを振り返る。

「築年数はおよそ40年、日当たりは悪いし駅から遠いということもあって、相場よりも家賃が安めに設定されていたんです。ただ、やはりフローリングの傷に落ちない汚れ、お風呂のタイルもひび割れているなど、部屋はいたるところで長年の傷みが目立っていた物件です。退去時にどこまで修繕費を請求されるのか心配でした。

 でも実際は、敷金が1万円くらい引かれただけでした。そのうえ、『長い間、きれいに使ってくれてありがとう。結婚おめでとう』と、5000円のギフト券までいただきました。人の温かみを感じる出来事でした」(Cさん)

 トラブルになりやすい退去時の修繕金や敷金返還問題。管理会社の言いなりになって、必要以上の金額を払うことのないよう、疑問を持ったときは、国民生活センターが運営している相談窓口などに相談して、正しい知識を身につけて対処したい。

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