劇的にゼロコロナ政策の緩和、転換もあるか
こうした事故に対する当局の対応はどうであっただろうか。
前者の妊婦の事件については複数のマスコミがその顛末を細かく報道している。当局は明確に非を認め、迅速な対応を行っている。
1月4日夜には関連部門が調査を開始。陝西省、西安市衛生健康委員会によって組織された専門家グループが1月5日には、これは事故であると認定。すぐに西安市衛生健康委員会はこの病院に対して患者と密接にやり取りし、患者の術後の治療や補償などの業務をしっかり行うよう指示している。
同時に人事処罰を発表、病院総経理は停職、診察部、医務部など関連部門責任者は免職、すぐに対応しなかった救急部門では、救急センター共産党支部副書記、主任(トップ)が警告処分となった。また、疾病防御コントロール期間中の特殊救急業務について、しっかり行わなかったとして西安市衛生健康委員会主任(トップ)が内部勧告処分となった。
こうした一連の当局の対応に対して妊婦の親族は1月6日午前、政府の対応に満足していると公表している。
西安市の現在の状況を確認すると、感染拡大はすでに収まっており、1月10日以来、新たな感染者はほぼゼロで推移している。1月18日現地時間10時におけるデータをみると、今回の流行による累計感染者数は2185人で、累計死亡者数は3人となっている。
その他の感染拡大地域について同時点の状況をみると、河南省が累計感染者数2573人に対して死亡者数は22人とやや多いが、天津市では962人に対して3人である。ちなみに、ここでの流行はオミクロン株ではないという。
中国では、冬季オリンピックの開催や秋の共産党大会まではゼロコロナ政策が続けられるといった見方がコンセンサスとなっているが、ウイルスの毒性と防疫対策による副作用の大きさを比較すると、景気への影響も含め、釣り合いが取れなくなりつつあるのではないか。
マスコミが対策の矛盾を報道し始めた以上、北京冬季パラリンピックが終了する3月13日以降、あるいは3月5日から始まる全人代を経たあたりで、劇的にゼロコロナ政策の緩和、転換が発表される可能性もありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。