1月21日から「まん延防止等重点措置」が13の都県に適用され、飲食店には21時までの時短営業が求められる他、知事の判断で酒類の提供も制限される可能性が出ている。緊急事態宣言同様、飲食店にとっては大打撃となるが、一部の飲食店からは「むしろ補助金がもらえてありがたい」という声もあがっているという。そして、そうした声があることに憤りを覚えている真っ当な飲食店も多い。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、飲食店店主たちの思いをレポートする。
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先日、とある地方都市の「街の事情通」的な人と話していたところ、「早くまん延防止等重点措置(以下、まん防)か緊急事態宣言を出してもらうよう、小規模飲食店の人が市役所に連絡した」という話を聞きました。まん防か緊急事態宣言の必要性を市役所に訴え、そこから県庁に上げてもらい、知事から国に要請をしてもらいたいとのことです。
これを聞いた瞬間、「自分がよく行く店の人たちはこんなこと思っていないのに……」と困惑してしまいました。私は生粋の呑兵衛のため、もうこの28年ほど飲み屋に行きまくっています。そして常連になるような店の店主や店員は皆、客が喜ぶ姿を見たいと言っていますし、客に「おいしかったです。また来ますね」と言われることが何より嬉しいと感じるような方々です。
その一方で、「まん防と緊急事態宣言を出してもらいたい」という店の人の言い分は、「そうなれば、店を時短営業ないしは休業すれば、1日に3万円とか4万円とかの補助金もらえるから、むしろありがたい」というもののようです。補助金は店の売り上げ規模にかかわらず一律ですから、地方の小規模な店ほど、「休んだほうが儲かる」というおかしな状況になっています。
「働かざる者食うべからず」という言葉をまったく理解していない税金・補助金頼りのグータラな発言だと思いますが、一部の“意識が低い”飲食店はこのような感覚を持っているのが現実のようです。
「店に出ることが自分にとって楽しいこと」
ただ、もちろんすべての飲食店がそういった考えを持っているわけではありません。私がよく行く飲食店の店主や店員たちは、次のように語っています。
「私は店を定休日の水曜日以外は閉めたくない。もう75歳になるけど、店に出ることが自分にとって一番楽しいことだから。お金の問題だけじゃないんです。もちろん、市や県から『まん防』や『緊急事態宣言』で時短営業や休業を求められたら従うけど、本当はフルでやりたい」(屋台店主)