「焼肉のたれ」などで知られるエバラ食品工業も、あえて選んだ企業だ。
「弊社がスタンダード市場を選択した理由は大きく2つ。1つ目は、株主の皆様が当社の株式を安心して保有・売買できる環境維持のため。2つ目は、限られた企業資源を弊社の価値の根幹となるモノづくり事業に集中させていくためです。
ありがたいことに、弊社の株式には長期保有の株主様が多くいらっしゃいます。そうした中、プライム上場維持基準である『1営業日あたりの平均売買代金2000万円以上』を安定的に充足するのは容易ではなく、基準に抵触すれば投資家の皆さんにご迷惑をかけることになります」(広報部)
前出・関氏がこうした企業の狙いを指摘する。
「プライムとスタンダードは上下の関係ではなく、立場の違いの意味合いが強いと感じます。海外投資家を視野に入れ、よりグローバルな舞台を目指すプライムに対し、まずはドメスティックな立ち位置でしっかりやっていくスタンダード、というイメージです。企業側としては、選択する市場により、どのような戦略を描いているかを内外に明確に提示することができます」
そして最も注目されているのが、医薬品大手の大正製薬だ。創業は1912年、ホールディングスの連結売上高2819億円(2021年3月期)と、日本を代表する製薬企業である。
同社の広報担当者は本誌取材に、「プライムの条件は満たしていますが、いろいろな要素を勘案した結果、スタンダード市場を選択することになりました。詳細は2月1日の第3四半期決算説明会のタイミングで発表する予定なので、お待ちください」と回答した。前出・関氏が言う。
「大正製薬は国内の大衆薬市場で強い会社。創薬事業を展開したり、世界的なベンチャーを買収したりするのではなく、既存の大衆薬ブランドをいかに育てていくかが大きなウェイトを占めます。むしろ国内にきちんと根を張り、そこで評価を高めていくべきと判断したのではないでしょうか」
各社の思惑が実を結ぶ日は、訪れるか――。
※週刊ポスト2022年2月4日号