兄・正裕氏のみずほ銀行は昨年だけで10回の大規模システム障害を起こし、金融庁から2回の業務改善命令、財務省からは是正措置命令を受けてトップ3人が引責辞任。その再建の成否はみずほ一行ではなく、日本の金融システムの根幹にも関わる重大な役割だ。
一方、弟の誠二氏は感染が急拡大するオミクロン対策とコロナからの経済回復という容易には解決できそうにない2つの難題に直面している。
「日本の危機」脱出を託されたキーマンの2人、木原兄弟とはどんな人物なのか。
父は「今回の人事は驚いた」
木原家は政治家の家系ではなく、もともとバンカー一族だ。父・雄一郎氏は東京銀行から日本国際通信の専務を務め、祖父は第一信託銀行常務、高祖父には戦前の台湾銀行副頭取や長崎の諫早銀行(現・十八銀行)頭取がいる。
新宿区の「御屋敷街」と呼ばれる高台に立つ実家を訪ねると、父の雄一郎氏が取材に応じた。
「私自身は銀行員として生きてきましたが、私が働いていた時代は日本の高度成長期ですから、銀行はその成長のために資金提供をするという重要な役割があった。それなりに力があった仕事でした。それが現在、だんだんとその魅力が下がってきたのは事実ですからね。だから、子供を銀行にやりたいという強い意向はありませんでした」
正裕氏の社長就任については意外だったようだ。
「私の常識では今回の人事は、かなり驚きました。私たちの時はある程度、順送りで、次(のトップ)は誰かと予想ができた。たぶん、本人もびっくりしていたと思います。まずは思う存分やってほしい。私が銀行に勤めていた時とは全く違う環境ですからね」