正裕氏は桐蔭学園高校から一橋大学法学部に進んだ。小学生時代にアイスホッケーを始め、大学時代はアイスホッケー部キャプテンを務めたスポーツマンだ。現在も時間をみつけては時々プレーするという。
大学卒業後にみずほの前身、日本興業銀行に入行、若手時代に米国の名門デューク大学ロースクールに留学したエリートで、帰国後は管理畑を長く歩いた。現在はみずほFG執行役としてM&A(企業の合併・買収)や国内外の決済業務などを担うグローバルプロダクツユニット長を務めている。
デューク大学時代の留学仲間で、木原兄弟と親交がある田村耕太郎・元参院議員が人となりをこう語る。
「留学に来ていた他の外国人に人気がありましたね。英語がうまい日本人はたくさんいますが、あれだけ国籍や文化の壁を越えて交流できる日本人は珍しいと思います。ジョークも受けるし、アメリカ人でさえ緊張するロースクールの授業で質問や意見表明を堂々とやっていた。ネイティブな英語力に加えてフェアな人柄が傑出していました」
面倒見もよかったという。田村氏が続ける。
「私が政治家になってから金融関係の政策を勉強したいと相談すると、彼は忙しいのに勉強会を開いてくれて、金融関係の多くの人を紹介してくれた。みずほのためというより、日本の金融界のためにという使命感を感じました。
その後、私が内閣府政務官になって金融庁も担当した時に、彼から『もっと官民が交流してお互いの仕事を理解すべきだと思う。敵は海外のライバル金融機関です。日本の金融界とそれが支えるべき産業界のために金融庁と金融機関の相互理解を深める機会を増やすべき』との提言を受け、官民の勉強会をやったことがある。そこでも、彼の金融業界全体や日本のために政治家や官僚に臆さずモノを言う態度が印象に残っています」
堅苦しいバンカーのイメージではなく、日本金融界の将来に広い視野を持つかなり社交的な人物であることが窺える。
(第2回につづく)
※週刊ポスト2022年2月4日号