Aさん曰く、“犬の保育園”へ通わせると社会性が身につくとのことだった。通っているという保育園の料金表を見せてもらうと、卒業までに週3回コースで10万円ほどかかることが判明。自宅から遠いことや、金銭的に厳しい旨を伝えると、Aさんは哀れむような目でチカさんを見てきたという。
「『都心に住む愛犬家たちはこれくらい普通だよ? 共働きでしょ? ワンコちゃんがかわいそう……』と言われました。私なりに愛犬にお金と時間を費やしていると思っていましたが、Aさんからの一言で私はダメな飼い主である気がしてきたんです。たしかに、Aさんのスコティッシュテリアは落ち着きがあるように感じたので、これが躾にお金をかけるとかけないの差なのかな、と」
さらにチカさんを悩ませる出来事が発生。散歩中に愛犬が吠えたことで、近くにいた歩行者が驚いて転倒してしまったそうだ。この件をきっかけに、散歩ルートを工夫したり、大好きなおやつで誘導したりするなど、自分なりに本を読んで愛犬の躾を試みてみたものの、思うようにはできなかったという。
このことをAさんに相談すると、「仕方ないよ。だってチカさんは、素人だもん」と、笑いながら言われてしまい、「もうどうしていいか分からなくなった」(チカさん)そうだ。残業代から費用を捻出して犬の保育園に行かせることを真剣に考え始めた時、思い悩むチカさんの様子を見ていた夫が冷静な一言を発したという。
「夫に『必死すぎて怖い』と言われて目が覚めたんです。癒しだったはずの愛犬との暮らしが、まるで変わってしまっていたと気が付きました。それ以来、Aさんからの煽りを必要以上に取り合うことは止めました。きっと彼女は、あたふたする私の姿を見るのが面白かったんでしょう。もちろん、周りに迷惑をかけない躾の工夫は今後も取り組んでいきますが、これまでの私は他人の意見にとらわれすぎていたように思います」
現在はAさんとは距離を置き、夫婦で考えをすり合わせながら、愛犬と楽しく生活を送っているというチカさん。コロナが落ち着いたら愛犬を連れて旅行に行きたいと話していた。
本人は親切心のつもりでも、踏み込んだ発言により相手の心を傷つけてしまう人は少なからずいるようだ。もしそのような場面に遭遇してしまったら、自分の考えをしっかりと持って、大切な家族を守ってほしい。