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スマホ事業で失望のバルミューダ 求められる「成功モデル」からの転換

「BALMUDA Phone」を発表するバルミューダの寺尾玄社長(写真/時事通信フォト)

「BALMUDA Phone」を発表するバルミューダの寺尾玄社長(写真/時事通信フォト)

独自UIが仇になる可能性も

 トラブルに見舞われながらも販売を再開したBALMUDA Phone。だが石川さんは、スマホ事業がこれまでの同社の成功モデルと大きく異なる点を指摘する。

「バルミューダは、一つの製品を作ったら基本的には後継機種を作らず、長く売り続けることで利益を伸ばしてきました。一度売った後は、不具合や修理対応などを除いて特に継続的なサポートも必要ありません。それに対してスマホは、業界で本気で戦おうと思ったら少なくとも1~2年に一度は新製品を発表しなければなりません。販売後も、追加料金が発生しないなかでOSやセキュリティのアップデートなどに対応し続ける必要があり、常に開発やサポート、人員にコストがかかる。これまでの同社の成功モデルとは明らかに異なります」

 BALMUDA Phoneは、OSにAndroid 11を採用しているが、Androidに含まれるスケジューラーや電卓、メモ帳などの基本アプリは使用せず、独自に作り変えたアプリを搭載している。

「プロダクトにこだわる同社らしい試みですが、スマホという製品の性質上、これが仇となる可能性もあります。過去、様々なメーカーが独自UI(ユーザーインターフェース)を搭載したスマホを開発してきましたが、Andoroid OSのバージョンアップに対応する度にコストがかかり、資金力のある韓国のサムスン電子やファーウェイ、OPPOなどの中国メーカー以外はほとんど失敗に終わっています。

 また、BALMUDA Phoneのカメラには料理が美味しそうに撮れるという『料理モード』が搭載されていますが、10年以上の時間を費やし、AIを駆使するなどしてカメラ性能を磨いてきた他社と比べると、正直勝負にもなっていない印象は否めません。スマホがデザインで差を付けにくい製品であることを考えても、バルミューダが得意としてきた攻め方が通用しない業界で存在感を出していけるのか、疑問が残ります」

「成功モデル」からの転換が求められるバルミューダ。スマホ事業成功のカギはどこにあるのか。

「BALMUDA Phone発売に際して評価できるのは、スタート段階で開発、製造を京セラが担当し、ソフトバンクが独占販売を行ってくれること。京セラの開発力とソフトバンクの販売力で、スマホ事業を推進する環境は整っていると言えます。あとは、同社の寺尾玄社長が欲しいと思えるものと、ユーザーの欲しいと思えるものをどう合致させられるかにかかっているのではないでしょうか。

 というのも製品を作る際、通常は画面サイズや色など、マーケティングリサーチを行った上でニーズにフィットするものを作りますが、寺尾社長は基本的にリサーチを一切行わないことを公言しています。自分の欲しいと思えるものを感性と信念で作り、成功してきました。しかし、今回ばかりはそのスタンスのままでは厳しいのではないかと思います。

 また寺尾社長は、BALMUDA Phoneの製品ページで米アップルの創業者である故・スティーブ・ジョブズ氏への謝辞を述べていることからも分かるように、ジョブズ氏に大きな影響を受けてバルミューダを立ち上げた人。iPhoneを意識してしまうのは仕方ないことかもしれませんが、iPhoneからAndroidに乗り換えるより、AndroidからAndroidに移行する方が比較的ハードルが低いことを考えれば、寺尾社長が目を向けるべきはiPhoneではなくAndroidの方だと言えます」

 BALMUDA Phoneの製品発表会で寺尾社長は、今より画面の大きい次期デバイスのデザインや開発も既に始めていることを明かしている。日本のスマホ業界にも新風を吹かせられるのか、今後の展開を見守りたい。

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