「殿様商売」という言葉がある。競合相手がいない場合など利用者側に他に選択肢がないのをいいことに、大した努力もせずに「買いたければ買え。嫌ならヨソへどうぞ」というスタンスでやる客商売のことを指す。利用者側は文句も言いたいところだが、他に選択肢がないのでしぶしぶ利用せざるを得ない。利用者たちが「これは殿様商売じゃないか?」と不満を感じたエピソードを集めた。
東京都に住むFさん(30代女性)は先日、こんな状況に遭遇した。
「息子が4月から公立小学校に通うことになり、校章入りの体操着を買うように指示されました。販売しているのは、小学校のすぐ近くにある洋品店。店構えは古くて薄汚れており、客がいるのを見たことがありませんが、ずっとやっていけているのは学校指定の店だからなのでしょう。
営業時間や営業日は一応店の前に書いてありますが、2~3回足を運んでも、“本日臨時休業”の連続。何回目かでようやく営業していたので、店に入って体操着を買いに来たと言うと、店のオバサンは面倒くさそうに『サイズは?』と言い、娘の身長を伝えると『それ、もうないわ』『来るのが遅いんだよ』と言いました。何とか取り寄せてもらうように手配しましたが、短気な夫にその話をすると怒鳴り込む勢いだったので、止めるのが大変でした」(Fさん)
選択の余地が無いことにくわえ、店員が横柄な態度だったことが、Fさんが腹立たしい思いをした理由だろう。ただ、このケースでは不愉快な思いをするのは一度だけで済むから、まだ救いがあるかもしれない。埼玉県に住むOさん(70代男性)は、週に何度も不愉快な思いをしている。
「私が住んでいるのは、都心から1時間ほどの場所にあるニュータウン。1980年代に開発され、街には似たような戸建ての家が立ち並んでいます。開発当時は駅前に複数の店が立ち並び、大変便利でしたが、高齢化が急激に進み、駅の利用者数はピーク時から半分以下に。店もどんどん潰れ、近隣のスーパーは1軒だけになってしまいました。
仕方なくそのスーパーで買い物していますが、近隣に競争相手がいないので安売りなどほとんどないうえに、生卵や生鮮食料品の価格は都心の高級スーパー並み。ブランド豚でも何でもない豚肉の細切れが100gで300円近くします。車がある人はヨソに買い物に行けますが、車を持っていない人や高齢で免許を返納した人も多く、もうあきらめムードです」(Oさん)