秋山博康 刑事バカ一代

警視庁・捜査第一課に出向したリーゼント刑事 初日から偉い人に怒られた思い出

「リーゼント刑事」こと秋山博康氏

「リーゼント刑事」こと秋山博康氏

「製品に劇薬を入れた。カネを払え」と大手食品メーカーが脅された恐喝事件では、新宿から地下鉄に乗った被疑者を尾行した。無線で「地下鉄の何線か」と聞かれたが、東京はケタ違いに路線が多く、自分がどこにいるか皆目見当がつかない。ようやく路線マークを見つけて「赤丸の線(丸の内線)です」と応えたら、「バカヤロー、何が赤丸だ!」と怒鳴られた。

 電車を降りた被疑者を追い、「現在、○△生命ビルの前を歩行中」と告げると、「バカヤロー、そんなんでわかるか!」とまたしてもガツン。徳島市内なら、目印になる大きな生命保険会社のビル名を言えば誰でも場所がわかる。東京でも「○△生命ビル」で通じると思ったのだが、大間違いだった。

 まるで「初めてのお使い」のようなドタバタ劇だったが、この時は電柱に記された住所を伝え、被疑者を特定することができた、事件の多い東京では徹夜の捜査が続いて3か月で体重が5kg減った。だが徳島県警代表として出向した以上、手ぶらで帰るわけにはいかない。

 刑事魂を燃やしたワシは徐々に頭角を現わすようになり、誰もが知る大事件の捜査を任されることになった。ほなっ、続きはまた!

【プロフィール】
秋山博康(あきやま・ひろやす)/1960年7月、徳島県生まれ。1979年、徳島県警察採用。交番勤務、機動隊を経て刑事畑を歩む。県警本部長賞、警視総監賞ほか受賞多数。退職後は犯罪コメンテーターとして活動。YouTube「リーゼント刑事・秋山博康チャンネル」が話題。

※週刊ポスト2022年2月11日号


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