中国ビジネスのスピード感
1月中旬以降、元隆雅図の株価が一旦急落していたことからわかるように、今回の件が起こる直前の公式マスコットの人気は期待外れだとみられていた。それがバズったのは2月2日から3日にかけてである。その後わずか数日で、元隆雅図のビジネス環境は激変した。
同社は、企画から商品供給まで、一貫して手掛ける贈答品メーカーである。主要顧客は、ネッスル、ウエルチ、ローレル、アリババ、テンセント、TikTok、ファーウェイ、シャオミ、中国平安保険などの大手消費関連企業である。
冬季オリンピック特許商品提供企業に選ばれており、ビンドゥンドゥン、シュエロンロンのぬいぐるみ、バッジ、記念硬貨、キーホルダーなども販売している。2月7日以降、ホームページを通じて投資家たちの質問に答える形で、“関連商品の需要が急増、フル回転で生産を開始した”と公表している。
2021年12月期の業績(2月15日時点の本土市場コンセンサス、同花順、以下同)は、予想ベースで6%増収、26%減益見通しだが、2022年12月期予想は33%増収、64%増益である。売上高は約7億元(126億円、1元=18円で換算、以下同様)増えて、純利益は約6900万元(12億4200万円)増える予想なのだが、これは、今回の件が起きる前の予想であり今後、大幅な上方修正が行われる可能性がありそうだ。
投資家や、元隆雅図の反応は確かに早いが、それは当たり前のことかもしれない。驚くのは、情報が拡散し、人気化する速度が尋常ではない点だ。これが正に中国ビジネスのスピード感である。
ちなみにギドゥンドゥン(辻岡アナ)は、寒空の中、シャツ姿になって、一生懸命買い集めたビンドゥンドゥンのバッジをたくさん付けて自慢していたが、中国人であれば初中(中学生)レベルの行動だと考えるかもしれない。それを大の大人、それも海外に派遣されるような立派なエリートが真面目にやっている。それがMCから激しくツッコまれ、笑いを取っている。
中国の“国宝”である“熊猫(パンダ)”をモチーフにした北京冬季オリンピックのマスコットを外国人が熱愛してくれている。そのことが、ともすれば“また熊猫か”と内心思っていた若者たちの関心を呼び覚ましたのは確かだろう。