新型コロナウイルス感染拡大の影響により、不要不急の外出を減らすためにリモートワーク(テレワーク)が普及した。しかし現状は、多くの職場で完全に定着とはいかないようだ。「Job総研」を運営するライボが行った「2022年 働き方意識調査」(社会人667人が回答)によると、今年の働き方として「出社頻度を減らしてテレワーク」を希望する人は全体の76.4%に上ったが、2022年の仕事始めの勤務形態を見ると、61.3%が出社していた。こうした働き方の変化によって、どのような影響が出ているのか。勤務先のリモートワーク導入に対応するため実家を出たという20代女性に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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都内在住の会社員、カスミさん(仮名、27歳)はリモートワークをきっかけに一人暮らしを始めたものの、「この先、不安で仕方がない」という。
「元々実家で暮らしていましたが、リモートワークの環境を良くするために一人暮らしを始めました。リモートワークだけでなくプライベートも心地よく過ごせるような部屋を探すことができたのですが、贅沢しすぎてしまった気がします」(カスミさん、以下同)
カスミさんが借りたのは、会社から電車で1時間以上離れたエリアにある1LDKの新築マンション。実家のほうが会社に近いものの、在宅勤務の際に集中できる環境ではないため、思い切って契約したそうだ。家賃は9万円ほどだが、光熱費などの固定費を合わせれば月収の半分近くになるという。気合いを入れて借りた新居での暮らしに暗雲が漂い始めたのは、会社からのある通知がきっかけだった。
「リモートワーク推奨だった会社の方針が変わり、原則出社してほしいとなりました。理由は、作業の環境が人それぞれ異なるため、業務に支障があるからだそうです。リモートワークが完全に廃止になったわけではないのですが、現在は体調に不安のある社員以外は出社している状況です。最初のうちは気にせずリモートワークを貫いていましたが、同じ部署のメンバー全員が出社していると知ってからは私も出社することにしました」
満員電車など“密”になりやすい場所へ行くことの不安を抱えながら会社へ行く毎日に、「納得ができない」と話すカスミさん。通勤時間がないリモートワークのほうが作業効率が良いと感じていただけに、出社勤務への心理的な抵抗はかなりのものだったようだ。